「強国」論

「強国」論

著者は、世界的に知られた歴史家であり、経済学者(ハーバード大学名誉教授)だ。これまでも、スケールの大きい学術業績を残してきた。本書では、驚くほどの博識に裏付けられた歴史的な視点を通して、われわれはどのようにして今に至ったのか、勝者と敗者を隔てたものは何だったのかを切り裂いてゆく。その問題意識にあるのは、気象などの自然条件がいかにして各国の社会に固有のシステムを生み出していったか、そのなかで経済の発展が可能であったか、また困難であったか、さらに経済の発展によって自然条件がどのように克服されていったか…などである。これはまさに、人間社会のダイナミックな発展史といえる。そこには、自然条件などの外的な要因の重要さとともに、変化・変革に対する人間の貪欲さ、ひたむきさが勝者と敗者を分けてきたという事実が、実に生き生きと描き出されている。きっと読者は、著者の繰り出す興味深い史実をわくわくした思いで繋ぎ合わせながら、そのなかで勝者と敗者がいかにして盛衰したかを理解することだろう。この本ほど面白さとその重みを見事に両立させている本はない。

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